東京高等裁判所 昭和56年(行ソ)9号 判決
1 先ず、再審原告の主張2の(一)の民事訴訟法四二〇条一項六号の再審事由があるとの主張は、要するに、本件審決取消請求事件の第二三回準備手続調書の記載が当事者の実際に主張したところと異なり誤つている部分があるというに帰着するところ、そもそも準備手続調書は当該訴訟事件において判決の証拠となるべきものではないばかりか、その主張の偽造または変造行為について、同条二項所定の要件を充すべき事実の主張を欠いており、したがつて、再審原告の前記主張は、適法な再審事由として採るに足らないものといわなければならない。
2 次に、再審原告の主張2の(二)の民事訴訟法四二〇条一項九号所定の再審事由があるとする主張自体は、一応同規定の再審事由に該当する事実の主張であるかのようにみえる。
しかし、再審被告は、再審原告がその主張する再審事由があることを知りながら、これを原判決に対する上告審において主張しなかつたので、本件再審の訴は不適法である旨主張する。
民事訴訟法四二〇条一項九号に該当する再審事由が存在するか否かは、事柄の性質上、再審原告たるべき者が終局判決正本の送達を受けることにより、当然に知りうべきところである。本件において、再審原告の主張するところを検討しても、これを否定しうべき特段の事情を認めるに足るものはないから、再審原告は、原判決正本の送達を受けることにより、原判決に右九号の規定に該当する再審事由があるとすれば、当然にそのことを了知したものというべきである。しかるに、本件審決取消訴訟事件の一件記録を検討しても、再審原告は、原判決に対し、上告の申立をしたにかかわらず、その上告理由中で主張のような判断遺脱の主張をした形跡はないことが明らかであるから、その後に、再審原告が原判決につき民事訴訟法四二〇条一項九号所定の再審事由ありとして再審の申立をすることは、同条一項但書の規定により、許されないところといわなければならない。
そればかりでなく、再審原告が再審事由として主張するところは、第二三回準備手続調書の記載が当事者の実際に主張したところと異なり誤つている部分があるから、これを基礎として当事者の主張を記載し判断した原判決には、判断を遺脱した部分があるというに帰着するところ、一件記録中の第二三回準備手続調書及び原判決の記載に徴すれば、再審原告の指摘する(イ)の点は再審原告の誤解に出たことが明らかであり、同(ロ)ないし(ニ)の点はいずれも、審決を違法として取消すべき事由の存否を判断すべき原判決に影響を及ぼすような事項にかかわるものとはとうていいえないような主張であつて、いずれも民事訴訟法四二〇条一項九号所定の再審事由たりえない事実の主張にすぎないものである。
以上によれば、本件再審の訴は不適法であるから、これを却下することとする。